兵庫医科大学病院
腎・透析内科

糸球体腎炎

疾患概要

腎臓は尿をつくる臓器ですが、その中でも血液をろ過し、老廃物の除去に重要な働きをしているのが「糸球体(しきゅうたい)」です。細い毛細血管が毛糸の球のように丸まっていることからこの名で呼ばれており、通常は1個の腎臓に約100万個の糸球体があると言われています。

ここに炎症が起きて糸球体腎炎になると、蛋白尿や血尿が認められるようになり、むくみ(浮腫)や高血圧などの症状がみられるようになります。腎臓にのみ病変を認める場合を「原発性」糸球体腎炎と呼び、膠原病や血管炎、悪性腫瘍など全身の疾患に伴って症状が現れる場合を「続発性」糸球体腎炎と呼びます。よって「続発性」の場合は、まず元々の全身の疾患の診断、治療を行うことが必要となります。また、症状の進行の早さや特徴によっても名称が異なります。

原因・症状

急性糸球体腎炎

急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する腎炎。小児期での発症が多いですが、成人でも発症することがあります。一般的に治癒するものが多いですが、慢性化することもあります。

急速進行性糸球体腎炎

数週から数ヶ月の単位で急速に腎臓の働きが悪くなってくる病気です。血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などをきっかけに医療機関を受診され、診断されることも多く、比較的高齢の方に多い疾患です。時に肺の症状を伴うこともあります。

慢性糸球体腎炎

IgA腎症や膜性腎症などの種類があります。特に症状がなく、健診などで蛋白尿や血尿を指摘されて、初めて気づかれる方も多い疾患ですが、尿の異常が持続することで、徐々に腎臓の働きが低下していくこともありますので、早期の診断が重要となります。

ネフローゼ症候群

尿中に大量の蛋白が漏れ出てしまうことで、血液中の蛋白が減少し、むくみが起きる病気のことをさします。急に血液中の蛋白が少なくなるために、血管内が脱水状態となり、尿が一時的に出にくくなることもあります。

検査

(1)尿検査

尿検査にて尿蛋白や尿潜血がどのくらい出ているのかを検査します。一日の尿蛋白量を調べるために24時間蓄尿検査を行うこともあります。

(2)血液検査

腎臓の機能を評価するための血清クレアチニン値以外に、ネフローゼの状態になっていないかどうか確認するために、血清蛋白やアルブミン値の測定を行います。また、糸球体腎炎の原因を調べるために必要な免疫学的検査なども行います。

(3)画像検査

超音波検査やCT検査にて糸球体腎炎以外の病気がないかどうか、腎臓の大きさや構造に異常がないかどうかを調べます。

(4)腎生検

尿検査や血液検査、画像検査でもある程度の情報を得ることは可能ですが、正確に診断するためには腎生検が最も有用な検査となります。腎臓の組織の一部を針で採取し、採取した糸球体を顕微鏡で観察、診断します。

治療

急性糸球体腎

安静臥床、食事療法(塩分や蛋白制限)を中心として、必要に応じて、抗菌薬、利尿薬の投与などを行います。

急速進行性糸球体腎炎

ほとんどの症例でステロイドを使用し、効果が不十分であれば、免疫抑制薬を使用します。
必要に応じて「血漿交換療法」という治療を行ったり、血液透析療法を実施したりもします。

慢性糸球体腎炎

腎炎の種類によって、治療法は異なりますが、一般的に食事療法(塩分、蛋白制限)に加え、腎臓を保護する作用のある降圧薬を投与します。さらにステロイドや免疫抑制薬などを投与します。また、IgA腎症に対しては、扁桃摘出術+ステロイドパルスとの併用療法が良好な治療成績を示していることから、当院でも積極的に行っています。

ネフローゼ症候群

「原発性」糸球体腎炎でも「続発性」糸球体腎炎でも起こりうる病態であり、治療法は異なりますが、一般的に食事療法(塩分、蛋白制限)に加え、腎臓を保護する作用のある降圧薬を投与し、むくみをとるために利尿薬も投与します。多くの腎炎でステロイドを使用し、効果不十分な場合や再発を予防するために免疫抑制薬を使用することもあります。

メッセージ

糸球体腎炎には色々な種類があり、尿の異常だけで自覚症状がなくても、徐々に腎臓の働きが悪くなってしまうものもあります。また、一度治療して良くなったと思っても、再発するものもあります。健診などで尿の異常(蛋白尿や血尿)を指摘されましたら、一度腎臓内科を受診されることをお勧めします。当院では、週に1回程度は腎生検を行っています。

腎・透析内科

患者さん個々の病態に合わせた治療を提供します

多くの腎臓病はその治療や合併症の管理が長期間にわたり、同じ疾患でも患者さんによって病状や経過が異なる事もあります。当科としては、単に疾患のみを診るのではなく、幅広い腎臓病に対して患者さん個々の病態に合わせた治療を提供できるように心掛けています。また経験豊富な腎臓・透析専門医が担当させていただく事で、外来でも入院でも患者さんが安心して治療に専念していただける診療体制を整えています。

倉賀野 隆裕(くらがの たかひろ)診療部長

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