兵庫医科大学病院
アレルギー・リウマチ内科

魚アレルギー

疾患概要

日本は魚介類の消費量が多いこともあり、成人発症の食物アレルギーの原因食物は第1位が甲殻類、第3位が魚類となっています。(消費者庁「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」,平成29(2017)年 即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果)

魚を食べた後にアレルギーが出た場合、
①魚アレルギー(魚のタンパク質に対するアレルギー)
②アニサキスアレルギー(魚に寄生している「アニサキス【※解説1】」のタンパク質に対するアレルギー)
③ヒスタミン中毒(鮮度の落ちた魚では「ヒスタミン【※解説2】」が増加しており、その魚を食べることで起こるアレルギー様症状)
が考えられます。

【※解説1「アニサキス」】

寄生虫の一種。アニサキスが人におよぼす影響は大きく2つあります。まず、魚に寄生しているアニサキスの虫体を生きたまま摂取し、それが胃の壁などに入り込んで激しい腹痛や嘔吐の症状を引き起こすことがあります。これを「胃アニサキス症」と言います。アニサキスは冷凍(−20℃以下で24時間以上)や加熱(70℃以上、あるいは60℃以上で1分以上)で死滅するため、予防することができます。もう一つが「アニサキスアレルギー」です。アニサキスが死滅してもアレルギーを起こすアレルゲンは残るので、アレルギー症状が起こります。

【※解説2「ヒスタミン」】

アレルギーが生じるときに大量に産生され、症状を起こす物質です。

原因・症状

原因は魚介類の摂取です。魚アレルギー症状の出現は、食べてから2時間以内がほとんどですが、アニサキスアレルギーの場合は、魚を食べてすぐに出現する場合もあれば数時間後に出現する場合もあるなど、幅があることが特徴です。

アレルギー症状は全身におよびますが、最も多いものは皮膚症状で、かゆみ、じんましんなどがあります。消化器症状では下痢・腹痛があり、呼吸器症状では鼻水やくしゃみがあります。重症化の場合、呼吸困難や血圧が低下し意識消失を起こすこともあります。

検査

検査は「①問診」「②血液検査」「③皮膚試験」「④食物経口負荷試験」があります。

①問診

魚アレルギーの診断では詳細な問診が重要です。どんな魚介類を食べて、いつ、どのような症状が出たかを詳しく聴取します。

②血液検査

魚アレルギーやアニサキスアレルギーを疑った場合に特異的IgE抗体価を測定し、評価します。特に、アニサキスアレルギーについては血液検査が診断にあたって重要ですが、魚アレルギーでは測定できる特異的IgEの種類は限られており、測定できない魚については皮膚試験が有用です。

③皮膚試験

皮膚プリックテストを行います。皮膚にアレルゲン液を滴下し、細い針でほんの少し傷をつけ(痛みはごく軽度です)、皮膚の中にアレルゲンをごく少量入れ、15分後に皮膚反応をみる検査です。じんましんのような皮疹(ひしん)が出現するかどうかを確認し、出現した場合はそのサイズを調べて評価します。

④食物経口負荷試験

アレルギーが確定している、もしくは疑われる食品を単回または複数回にわけて摂取し、誘発症状の有無を確認する検査です。

魚を食べてアレルギー症状が出ても、上記②〜④のいずれの検査も陰性であった場合はヒスタミン中毒であった可能性が高いと考えられます。

治療

アレルギー症状の治療では、皮膚症状のみであれば抗ヒスタミン薬を内服します。重症なアレルギー症状の際はエピネフリンの筋肉注射を早急に行う必要があります。また、一度重症のアレルギー症状を起こした患者さんは予備薬としてエピペン®注射液(携帯可能なエピネフリンのペン型注射キット)を常備する必要があります。

魚アレルギーやアニサキスアレルギーは、魚を加工(加熱もしくは冷凍)してもアレルゲンが低減化(弱まる)しないことも多いため、注意が必要です。現在は適切な回避が一般的な治療法とされています。

一方、食物アレルギーの治療は過度な食事制限にならず、必要最低限の除去が重要とされています。検査で特異的IgEが高くても食べられる場合には安易に除去を指導しないことが必要です。

魚介類アレルギーは一度発症すると、なかなか寛解しにくいとも言われていますが、一部の医療機関では、経口免疫寛容の誘導をめざした積極的な治療も行われ始めています。今後、水産物の低アレルゲン化や経口免疫療法のさらなる発展が期待されています。

アレルギー・リウマチ内科

進化は止まらない 「できない」が「できる」に

当科は、リウマチ・膠原病などの全身性自己免疫疾患とアレルギー疾患を専門としています。近年、これらの疾患に対する診断技術の進歩と新規治療薬の開発は目覚ましく、「分からなかったことが分かる」ようになり、「できなかったことができる」ようになって来ています。我々は科学的根拠に基づき、より早期に診断し、病状、合併症、社会的背景などを考慮した個々の患者さんにとって最適の治療方針を提供することを目指しています。

東 直人(あずま なおと)診療部長

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