疾患概要
食物アレルギーとは、免疫学的な仕組みを介して、食物によって身体に不利益な症状が引き起こされることを言います。牛乳による乳糖不耐症や鮮度の落ちた魚によるヒスタミン中毒など、免疫学的な仕組みによらない反応は「食物不耐症」と呼ばれ、食物アレルギーとは区別されています。
食物アレルギーは大きく分けて、「①新生児・乳児消化管アレルギー」「②食物アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎」「③即時型食物アレルギー」「④食物依存性運動誘発アナフィラキシー」「⑤口腔アレルギー症候群」の5つあります。一般的に食物アレルギーというと、③の即時型を示すことが多いので、ここでは主に即時型食物アレルギーについて説明します。
原因・症状
乳児期に発症することが多く、乳児~幼児では鶏卵、牛乳、小麦が主な原因食材となります。年齢が上がるにつれて魚卵、甲殻類、そば、ナッツ類が増加します。
食物アレルギー症状があって医療機関を受診された患者さんの中で、じんましんなどの皮膚症状が約9割、喘鳴(ぜんめい)・咳嗽(がいそう)などの呼吸器症状が約3割、嘔吐・下痢などの消化器症状が約2割の方にみられたという報告があります。アナフィラキシーショックという強いアレルギー症状も約1割の方にみられました。
また、「家族歴やアトピー性皮膚炎、生活環境中に食物アレルゲンが多いと発症しやすい」ということも分かっています。乳児期にアトピー性皮膚炎などで荒れた皮膚に食物アレルゲンが接することで、「感作(特定の物質に対してアレルギー反応が起こりやすくなること)」が成立し、食物アレルギーが発症すると考えられています。
検査
よく行われる検査として、「プリックテスト」「特異的IgE抗体検査」「経口負荷試験」があります。
プリックテスト
アレルゲン液を前腕に垂らし、その上から針でごく軽く穿刺(せんし)します。15分後に膨疹(ぼうしん)の有無で判断します。
特異的IgE抗体検査
血液検査で特定のアレルゲンに対する抗体の量をみます。0~6のクラス判定で表現されることが多いです。
経口負荷試験
原因となる食物を少量から実際に食べてみることで、アレルギー症状の有無をみます。プリックテストや特異的IgE抗体検査では、偽陽性や偽陰性が一定の頻度であるため、これらの検査結果を参考に経口負荷試験を行います。この経口負荷試験が、食物アレルギー診断のゴールドスタンダードとされています。
治療
「必要最低限の除去」が基本的な方針となります。そのためには、上記の経口負荷試験を実施し、「原因と思われている食材で本当にアレルギー症状が起こるのか」「ある程度の量を摂取することで症状が起こるのであれば、安全に食べることができる量はどれぐらいになるのか」を調べる必要があります。
誤食などでアレルギー症状が出てしまった場合は、症状の強さや種類に合わせてアドレナリン筋肉注射や抗ヒスタミン薬の投与、気管支拡張薬の吸入などを行います。一部の症例では、アレルギー症状が誘発されない量の食物アレルゲンを継続して摂取していると摂取可能量が増えてくる「経口免疫療法」が有効との報告があり、症状やご希望に合わせて当院でも実施しています。
参考文献:日本小児アレルギー学会 食物アレルギー診療ガイドライン2016<2018年改訂版>
こども達の健やかな成長をサポート
小児一般病床 20床、新生児室 27床(うち新生児集中治療室 15床)を有し、小児神経・筋疾患、小児腎疾患、新生児(NICU)、先天代謝異常症、小児内分泌、小児アレルギーなどの専門的な疾患の高度医療を行うとともに、感染症などの一般小児疾患の患者さんや、在宅医療が必要な患者さんにも対応し、診療を行っています。
地域のこども達の健やかな成長をサポートしていきます。
竹島 泰弘(たけしま やすひろ)主任教授