兵庫医科大学病院
炎症性腸疾患外科

クローン病(外科治療)

疾患概要

クローン病も、潰瘍性大腸炎と同じように腸に炎症を起こす病気で、原因は不明で難病指定疾患となっています。この病気も過去には日本では少なかったのですが、最近ではかなり患者さんが増加しています。2013年の時点での医療受給者数は3万9,799人となっており、2020年時点で約7万人と推定されています。10~20代の若年者に発症することが多く、社会的、経済的影響が大きいと言われています。高齢で発症する方は潰瘍性大腸炎に比べると少ない傾向にあります。

原因・症状

原因は潰瘍性大腸炎と同じく不明ですが、何らかの要因により免疫異常が発症し、腸がそのターゲットになります。ターゲットとなった腸で炎症を引き起こし、ただれて、潰瘍ができ、出血や下痢を引き起こします。


 食生活の変化(高脂肪、高たんぱく食など)が原因で腸の免疫機能に異常が発生し、その結果、「免疫異常が誘導される可能性が高い」と言われています。また、昔の日本における野菜、魚類中心の食生活から肉類が増加したのも一つの要因とされています。潰瘍性大腸炎との大きな違いは、口から肛門まであらゆる腸に病変ができる可能性があることです。


つまり、口内炎から胃、小腸大腸の炎症による発熱、腹痛、下痢、出血、肛門病変である肛門周囲膿瘍や痔瘻(おしりの周りが腫れて膿が出る)など、様々なところに病気が出現します。腸の病変の特徴としては、縦長の潰瘍(縦走潰瘍:じゅうそうかいよう)や不整型の潰瘍ができます(上図参照)。潰瘍性大腸炎と異なり、腸の深くまで炎症が起こるために、腸が破れたり(穿孔:せんこう)、腸と腸や腸と皮膚の間にトンネル(瘻孔:ろうこう)を作ったり、腸の外側に膿のたまりを作ったり(膿瘍:のうよう)、腸が狭くなったり(狭窄:きょうさく)します。日本人の特徴として、長期に炎症が続く場合、直腸や肛門を中心にがんができやすくなるため注意が必要です。

検査

病気の診断やひどさ、治療の効果を判定するためにいくつかの検査方法があります。まず血液検査では炎症の程度、下痢による栄養状態の変化、出血による貧血の程度、いろいろな治療による他臓器への影響(肝臓や腎臓など)を調べます。そして腸自体の炎症は「内視鏡(胃・小腸・大腸)」「レントゲン検査」「超音波」「CT」「MRI検査」などが行われます。特に内視鏡検査で実際の病変がある場所、炎症の程度を評価し治療法の決定、変更を行うようになっています。

治療

基本的には潰瘍性大腸炎と同じく、炎症を抑えることが基本になります。まずは抗炎症といわれる薬剤が使用されますが、効果が不十分である場合には、根本にある免疫異常を抑えるための治療が行われます。免疫を抑える治療はさまざまで、ステロイド、免疫調節剤、炎症の物質を抑える生物学的製剤、抗体製剤が用いられます。

強く免疫を抑えると、抵抗力がなくなり肺炎を起こしたりといった副作用も出てきますので、バランスを考えながら治療を選択していきます。クローン病の場合には食事に含まれる脂肪成分が腸の炎症に影響するので食事療法や栄養(主に脂肪分)を制限する治療もあります。クローン病でもこうした治療が十分効果を発揮しない場合や炎症がひどくなりすぎる場合には手術により病変を切り取る場合があります。これが外科治療です。クローン病も長年にわたる炎症はがん化することもありますので、その場合にも手術治療が必要です。

基本的には病変のひどいところだけを切り取る手術が行われます。残念ながら、手術で病変を切り取っても別のところに再発することが多く、手術後にも炎症、免疫異常を抑える治療が必要となり、再手術も必要となる場合があります。また、何度も手術を繰り返すと、どんどん腸が短くなっていき、水分と栄養吸収の能力が落ちて、家でも点滴が必要になる危険性があります。そのため、腸の切除は最小限にし、可能な場合は腸管を切らずに拡げることができる狭窄形成術(きょうさくけいせいじゅつ)を併用します(下記イラスト参照)。そのほか、クローン病ではおしりの病変のために何度も手術が必要になったり、人工肛門となったりする場合もありますので、早めの治療が勧められています。

炎症性腸疾患外科

難病である潰瘍性大腸炎とクローン病を総合的に診療いたします

炎症性腸疾患は、原因不明の難治性疾患が多く、代表的な疾患として潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)があります。
難治性の炎症性腸疾患患者さんを、内科・外科が共観しながら、メディカルスタッフとともに総合的に診療いたします。
また、遠方の患者さんや長期経過の患者さんには、病診連携・病病連携を通じて地域の医療機関と共同した治療を行うよう努めています。

池内 浩基(いけうち ひろき)診療部長

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