疾患概要
睡眠中にいびきをかいたり、息が止まったりして家族やパートナーから指摘されたことはありませんか。もしかすると、それは「睡眠時無呼吸症」かもしれません。
睡眠時無呼吸症の中でも特に多いのが、息の通り道(上気道)の閉塞が原因となる「閉塞性睡眠時無呼吸症」です。国内の推定患者数は900万人以上(※1)といわれていますが、自覚症状に乏しく、実際に治療を受けているのは50万人に満たない(※2)とされています。
近年、この病気が高血圧や心筋梗塞、糖尿病などの増悪因子になることが知られるようになっただけではなく、さまざまな事故の引き金になるなど、社会的な問題としても認識されるようになり、治療のニーズが年々高まっています。
(※1)Benjafield AV, Ayas NT, Eastwood PR, et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med 7: 687-698, 2019.
(※2)佐藤誠.睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学.日内会誌 109: 1059-1065, 2020.
原因・症状
閉塞性睡眠時無呼吸症は、肥満であることや下あごが小さいこと、扁桃が大きいことなどが原因となり、息の通り道(上気道)が狭くなって発症します。上気道が完全に詰まってしまうと、無呼吸となります。無呼吸になる手前の段階、すなわち上気道が完全に詰まる手前の段階でよく見られるのが「いびき」です。
睡眠中の呼吸が妨げられると、深い眠りが得られないために寝起きが悪くなったり、熟睡感が得られなくなったり、日中に強い眠気が生じて居眠りをしてしまったりするといった症状が出てきます。
検査
睡眠時における無呼吸の程度を調べます。ただし、これは医科でのみ受けられる検査であるため、当科では当院の耳鼻咽喉科や近隣の医療機関と連携して実施しています。この検査を当科での治療前後で実施することで、治療効果の判定やその後の治療方針の決定を行っています。
そのほかに、側方頭部X線規格写真撮影を行い、その画像をもとに口腔や咽頭のどこに閉塞の原因があるかを調べ、複数の検査の結果をもとに当科での治療効果が期待できるかを診断します。
治療
当科では、閉塞性睡眠時無呼吸症に対して「口腔内装置(いわゆるマウスピース)」による治療を行っています。口腔内装置を装着し、下顎が普段よりも前方に出た状態を作り出すことで息の通り道(上気道)が広がり、無呼吸を改善するというメカニズムです。眠る時にだけ装着して使います。あくまで対症療法であるため、口腔内装置を使い続ければいつか病気自体が治るというものではありませんが、軽症・中等症の閉塞性睡眠時無呼吸症だけでなく、中には重症の方でも改善が認められる例もあります。
かかりつけ歯科と連携し、専門的な口腔治療を行っています
口腔は、食べる、会話するなど、楽しく生きていくうえで極めて重要な機能を担っていますので、口腔に疾患を生じると非常に苦痛です。
当科では、患者さんのかかりつけ歯科と連携し、むし歯や歯周病、親知らずなどの治療(主に抜歯。一般歯科診療はかかりつけ歯科でお願いしています)と、口腔粘膜(舌や頬、歯肉など)に生じる疾患の診断と専門的治療を行っています。手術などの治療の内容によっては、入院が必要な場合もあります。口腔の面から患者さんをサポートします。
岸本 裕充(きしもと ひろみつ)診療部長