疾患概要
大人と同様に、子どもたちも慢性的な頭痛(3カ月を超えて繰り返す頭痛)を訴えることがあります。「精神的なもの」や「疲れ」が原因なのでしょうか?
慢性的な頭痛は、特に原因のない「一次性頭痛」と、原因のある「二次性頭痛」に分けられます。子どもの慢性頭痛では、中学生の5人に1人が強い頭痛を感じたことがあるとされていて、一次性頭痛の中で最も有名な「片頭痛」は中学生で4.8%、高校生で15.6%が経験しているといわれています。片頭痛で受診した子どもたちを対象に調査したところ、最初に頭痛を感じたのは6~7歳くらいが最も多いことが知られています。
頭痛は、我慢するか頓服(とんぷく)薬を使用するしか治療方法がない、と思われていることも多いですが、きちんとした治療を行うことで回数を減らせる場合もあります。この記事では、一次性頭痛について説明します。
※参考:慢性頭痛の診療ガイドライン(2013).医学書院.
原因・症状
一次性頭痛の原因はよく分かっていません。一次性頭痛の中で最も研究されている片頭痛は、三叉(さんさ)神経の刺激によって頭の血管が収縮したり、拡張したりすることで発症するといわれています。
一次性頭痛は全部で大きく13種類に分けられますが、慢性頭痛で病院に来る子どものほとんどが片頭痛か緊張型頭痛です。
片頭痛は、突然誘因もなく「ズキズキ、ドクドク」と表現される拍動性で強い頭痛が2時間以上持続して起こり、頭痛中に光や音に過敏になったり、嘔気・嘔吐を伴い運動ができなくなったりします。子どもの場合は、寝て起きるとすっきりと治っていることもあります。他の特徴として、腹痛を伴ったり、親が片頭痛を持っていたり、車酔いがひどかったりするなどの特徴もあります。
一方、緊張型頭痛は頭が重たくなるような非拍動性頭痛で、30分以上持続します。片頭痛のように嘔気・嘔吐は伴いませんが、光・音のいずれかの過敏を認めることがあります。
検査
一次性頭痛であると診断するためには、二次性頭痛ではないことを確認する必要があります。診察室で細かく診察して異常がなければ頭部の画像検査が必要になることはほとんどありませんが、血液検査はよく行います。実際には、子どもの慢性頭痛に何か検査で異常が出ることはほとんどありません。
治療
今まさに起こっている頭痛には鎮痛剤を使う場合が多いですが、片頭痛の場合は「静かで、暗くて、涼しい場所でゆっくりする」という方法が効果的です。このような睡眠や食事、運動などの生活リズムを調整していく治療法を「非薬物療法」といいます。
それでも頭痛の頻度が多い場合は、予防内服薬での治療があります。これは、鎮痛剤とは違う薬を毎日内服することで、頭痛の頻度を下げる治療です。
また、子どもの慢性頭痛は同時に存在する別の体質が影響し、難治化していることもあります。有名なものは、自律神経機能障害の一つである起立性調節障害や神経発達症(発達障がい)です。この場合、頭痛の治療だけを行っても改善しないため、それらの体質に対する対応も行う必要があります。
こども達の健やかな成長をサポート
小児一般病床 20床、新生児室 27床(うち新生児集中治療室 15床)を有し、小児神経・筋疾患、小児腎疾患、新生児(NICU)、先天代謝異常症、小児内分泌、小児アレルギーなどの専門的な疾患の高度医療を行うとともに、感染症などの一般小児疾患の患者さんや、在宅医療が必要な患者さんにも対応し、診療を行っています。
地域のこども達の健やかな成長をサポートしていきます。
竹島 泰弘(たけしま やすひろ)主任教授