疾患概要
腸管型ベーチェット病は、難病指定疾患となってるベーチェット病のうちのひとつで、消化管に炎症が起き、繰り返し潰瘍ができる病気です。日本では北海道、東北に多く北高南低の分布を示します。ベーチェット病の医療受給者数は、1991年の1万8,300人以降減少していましたが、ここ数年は徐々に増加傾向であり、2013年の時点での医療受給者数は1万9,147人(※)となっています。ベーチェット病の約20%に消化管病変や消化器症状を伴うとされていますが、その中で腸管型ベーチェット病がどのくらいなのかは明らかではありません。20~40歳代に発症することが多く、男女差はほとんどないとされています。
原因・症状
原因は不明ですが、遺伝的な素因と何らかの外因・環境因子が発症に関与すると考えられています。
ベーチェット病の主な症状は、口内炎、外性器の潰瘍、皮膚炎、眼の炎症です。副症状として、関節炎、副睾丸炎、血管炎、消化器症状、神経症状があります。腸管型ベーチェット病は、特徴的な症状に乏しく、軽症の場合は、症状が無いこともあります。小腸と大腸のつなぎ目のところ(回盲部:かいもうぶ)が好発部位であり(下記イラスト参照)、右下腹痛を伴うことが多いです。また、慢性下痢、血便、体重減少、腸閉塞も伴うことがあります。
検査
病気の診断やひどさ、治療の効果を判定するためにいくつかの検査方法があります。まず血液検査では炎症の程度、下痢による栄養状態の変化、出血による貧血の程度、いろいろな治療による他臓器への影響(肝臓や腎臓など)を調べます。そして腸自体の炎症は内視鏡、レントゲン検査、超音波、CT、MRI検査などが行われます。特に内視鏡検査で実際の病変がある場所、炎症の程度を評価し治療法の決定、変更を行うようになっています。
治療
炎症を抑えることが基本になります。まずは抗炎症といわれる薬剤を使用していきますが、効果が不十分の場合は、根本にある免疫異常を抑えるための治療を行います。免疫を抑える治療はさまざまで、ステロイド、免疫調節剤、炎症の物質を抑える生物学的製剤、抗体製剤などが用いられます。
強く免疫を抑えると、抵抗力がなくなり肺炎を起こしたりといった副作用も出てきますので、バランスを考えながら治療を選択していきます。治療が難航する場合は、絶食にしたり経腸栄養を行う治療法もあります。こうした治療が十分効果を発揮しない場合や炎症がひどくなりすぎる場合には、手術により病変を切り取る場合があります。これが外科治療です。
クローン病と同様に、手術で病変を切り取っても再発することが多く、基本的には病変のひどいところだけを切り取る手術を行います。手術後にも炎症、免疫異常を抑える治療が必要です(図「当科での累積再手術率」参照)。
難病である潰瘍性大腸炎とクローン病を総合的に診療いたします
炎症性腸疾患は、原因不明の難治性疾患が多く、代表的な疾患として潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)があります。
難治性の炎症性腸疾患患者さんを、内科・外科が共観しながら、メディカルスタッフとともに総合的に診療いたします。
また、遠方の患者さんや長期経過の患者さんには、病診連携・病病連携を通じて地域の医療機関と共同した治療を行うよう努めています。
池内 浩基(いけうち ひろき)診療部長