疾患概要
腎盂尿管移行部狭窄(じんうにょうかんいこうぶきょうさく)とは、腎盂と尿管の繋ぎ目に狭窄があり、狭窄部より上流の尿路である腎杯、腎盂が拡張する(水腎症)疾患です。出生1,000人から2,000人に1人の発生頻度と言われています。
原因・症状
原因として以下の2つの分類があります。
➀内因性:尿管自体の狭窄・尿管ポリープ (乳幼児に多い)
②外因性:尿管を横切る血管が尿管を圧迫する (年長児~成人に多い)
発見の契機は、「超音波検査やCTで偶然に症状なく発見される場合」と「腹痛・側腹部痛、嘔吐、腹部腫瘤、血尿、発熱などの症状で発見される場合」があります。乳幼児の場合、腹痛の訴えが難しく、嘔吐が主症状となることもあり、注意が必要です。
検査
<検査手法>
・超音波検査:非侵襲的に水腎症の程度を把握することができます。
・利尿レノグラム:左右の腎臓の働きや通過障害の程度を調べ、手術が必要か判断するために行います。
・CT、MRI検査:尿管を圧迫している血管がないか、尿管内にできものがないかを調べます。
・逆行性尿路造影:狭窄の位置や長さを把握し、手術方法決定の手助けとします。
治療
特に乳幼児期については、腎臓のはれが自然と治っていく場合があり、「レノグラム検査により腎臓の機能低下を認めた場合」や「腰痛などの症状が強い場合」は、手術治療である腎盂形成術の対象となります。腎盂形成術は狭くなっている部分の尿管を切除し、腎盂と尿管を縫い合わせる手術です。血管の圧迫が原因の場合は血管を圧迫しない位置に移動させて(乗り越えて)腎盂と尿管を縫い合わせます。
アプローチとして開腹手術が乳幼児の標準治療であり、2~4cmの小切開で可能です。
年長児から成人ではさらに創部の小さい腹腔鏡手術が可能です。2020年4月よりロボット支援手術が本邦でも保険適応となりました。
現在、当科では3カ月の乳児から高齢者まで幅広い年代の患者さんの治療を行っています。
その中でも、ロボット手術が主流となっており、成人では全例が対象であり、小児では2歳以降から施行可能です。
小児のロボット支援手術については、臍以外の傷がパンツをはけば隠れる手術法(Hidden Incision Endoscopic Surgery:HIDES法)を採用しています。
多彩な腎泌尿器疾患に、確実で高度な先進的治療を提供します
泌尿器科は尿路(腎、尿管、膀胱、尿道)、副腎および男性⽣殖器(前⽴腺、精巣など)のさまざまな疾患を治療する科です。
兵庫医科大学病院 泌尿器科では、外科的アプローチと内科的アプローチを効率よく組み合わせた集学的治療によって、常に患者さんの⽣活の質(QOL:Quality of Life)の向上を意識した診療を⾏っています。
山本 新吾(やまもと しんご)診療部長