疾患概要
大腸は食物の通り道で、食道、胃、十二指腸、小腸に続く臓器です。大腸は、結腸、直腸に分かれ、そのうち結腸に発生するがんのことを結腸がんといいます。
結腸がんはさらに発生する部位に応じて、盲腸がん、上行結腸がん、横行結腸がん、下行結腸がん、S状結腸がんに分かれます。
結腸がんの日本国内年間発生数は約8万人であり、男性に多く、高齢になるにつれてその頻度は増加します。”がん”に伴う死亡者数を検証すると、男性では肺がん、胃がん、膵臓がんについて第4位、女性では肺がん、膵臓がんについで第3位となります。
結腸がんと直腸がんを合わせたデータですが、大腸がん研究会による大腸がん、Stage別の5年生存率では、Stage 0/Ⅰ/Ⅱ/Ⅲa/Ⅲb/Ⅳ=94%/92%/78%/60%/19%となっています。
原因・症状
大腸粘膜に発生したがんは、次第に大きくなります。
最初は粘膜にとどまっていますが、次第に大腸壁の深層、つまり、筋層や漿膜に浸潤していきます。さらに、リンパ流や血液の流れに乗って、リンパ節転移や、肝臓、肺への遠隔転移をきたします。
症状は右側にできるがん(盲腸がん、上行結腸がん)と、左側にできるがん(S状結腸がん)で異なり、前者では便がまだ液状であるため、血便や体重減少などの症状で、後者では便秘、鮮血便などの症状で発見されます。しかし、いずれの場合も進行しないと自覚症状はほとんどなく、進行して初めて症状がでることが多いです。
早期発見のためには、定期的な検診が重要となります。また、がんの予防には食物繊維の摂取が有用であり、肉や加工肉、飲酒、喫煙、肥満、運動不足は大腸がんのリスク因子とされています。また、一部の大腸がんは遺伝性であり、家系の病歴も重要な診断材料となります。
検査
1.注腸検査
バリウムを注入し、レントゲンを撮影します。この検査で腫瘍の正確な位置を確認できますが、最近ではCT検査で代用できるため、省略されることが多いです。
2.大腸内視鏡検査
肛門から内視鏡を挿入して大腸全体を観察します。必要に応じて組織を採取することが可能で病理検査で最終診断を行います。
3.CT検査
X線を用いて体の内部を描きだす検査で、病変の大きさや、リンパ節腫大の有無、肺、肝臓への転移の有無の検索に有用です。
4.PET検査
がん細胞がブドウ糖の取り込みが高いことを利用して遠隔転移を検出する検査です。CTで遠隔転移を検索しますが、診断に難渋する場合にもPETを用います。
5.腫瘍マーカー
血液検査で測定します。大腸がんの場合にはCEA、CA19-9を用います。ただし、大腸がん特異的に上昇するわけではありませんし、がんがなくても上昇することがありますので、手術後の再発のチェックの補助として用います。
治療
大腸がんの治療は、主に内視鏡治療と外科的切除に分けることができます。内視鏡治療の適応は早期のがんで、リンパ節転移の可能性がほぼなく腫瘍が一括で切除できる場合に行います。内視鏡治療ではがんの切除が難しい場合、手術を選択します。手術では、腸管にできたがんとともに、周囲のリンパ節をひと固まりとして切除します。腹腔鏡手術で行うことが大半ですが、腫瘍が大きい場合や他臓器合併切除が必要な場合には、開腹手術で行うことがあります。
食事の再開は術後4日目とし、術後1週間程度を退院の目安としています。

根治性と機能温存のバランス、あきらめない治療を!
大腸がんは、現在日本人が最も多く罹っているがんであり、女性では、最も多いがん死の原因となっています。
当科では大腸がん治療を中心に、小腸、大腸、肛門における良性、悪性疾患の外科的治療を積極的に行っています。
直腸・肛門疾患については根治性と機能温存のバランスに十分留意して治療を行っています。
当科の特徴は、進行した直腸がんでも集学的治療により出来るだけ肛門温存を図るようにしており、また再発した場合でも抗がん剤や放射線治療、そして手術療法を組み合わせることで「あきらめない」治療を実践しています。
池田 正孝(いけだ まさたか)診療部長