兵庫医科大学病院
下部消化管外科

直腸がん局所再発

疾患概要

日本国内の直腸がん罹患者数は年間約10万人であり、内視鏡的もしくは外科的切除を行い、根治をめざします。しかし、直腸は肛門から15cmの場所にある骨盤内の大腸であり、周囲には、男性であれば精嚢(せいのう)や前立腺、女性であれば子宮や膣が接しており、背面には仙骨があります。

これらの臓器、もしくは周囲リンパ節に腫瘍が再発することがあり、局所再発の頻度(9%)は肺(8%)や肝臓(7%)と比較しても高率です。最も根治性の高い治療は局所再発巣の外科的切除ですが、直腸は骨盤内の奥深くにある臓器であり、完全切除には周囲臓器合併切除を必要とすることが多く、手術手技が非常に複雑で大量出血のリスクも伴うため、全国の限られた病院でのみ行われているのが現状です。当科は、隣接臓器合併切除や仙骨、恥骨合併切除のような超高難度手術まで数多く手がけており、局所再発に対応可能な国内でも限られた施設の1つです。

原因・症状

直腸癌の局所再発原因として、大きく2つに分かれます。

1つは骨盤内のリンパ節への転移。それが増大することがあります。とくに膀胱や子宮などの骨盤臓器に行く血管周囲に発生します。もう1つは直腸がんが切除範囲を超えて増大している場合で、初回手術の後に診断されます。

がん細胞は顕微鏡レベルで進展するため、手術中にお腹の中を確認しても腫瘍の進展は正確に診断できないことも原因となります。局所再発と診断される患者さんは、定期的な手術後の検診で診断されることが多いです。そのため、症状がない状態で診断される場合もあります。一方で、直腸周囲には下肢の動き、感覚を支配している坐骨神経や閉鎖神経があり、これらの神経に浸潤すると下肢の痛みが出てきます。さらに、肛門皮膚に浸潤した場合には、がんが露出し疼痛や悪臭を伴います。

検査

基本的には「大腸がん」の診断と同様の検査を行います。しかし、局所再発の診断で大腸がんと異なる点として、腸管粘膜から離れた部位に再発した場合には診断目的に組織を採取することが困難なことがあります。

その際には、PET検査で代用したり、一定期間の経過を見て腫瘍の増大があった場合に局所再発と診断したりします。また、局所再発の手術適応を決めるにあたり、遠隔転移の有無は大きな意味を持ちますので、肺や肝臓などの遠隔転移の有無を正確に診断します。

治療

局所再発の外科的切除は、完全に切除が可能と診断された場合に行います。再発部位は解剖学的に複雑な部位に多く、十分な距離を確保して切除するため、骨盤臓器もしくは骨盤壁を合併切除することがあります。その場合、整形外科や泌尿器科、形成外科なども含めた手術チームの習熟が必要となり、限られた施設でのみ手術を行うことが可能です。また、骨盤内の血管は複雑で出血すると大量出血の原因となります。

 私たち下部消化管外科では、2020年度、大腸がんに対する局所再発治療を20例行っており、そのうち14例に対して腹腔鏡、もしくはロボット支援下での手術を行っています。手術時間は10~15時間と長時間手術となりますが出血量中央値は約500mlと少なく、創部の縮小、それに伴う創部感染の減少が図れています。このような拡大手術での最大の問題は、切除後の骨盤空間に感染をおこす骨盤死腔炎ですが、当科では腹腔内の脂肪(大網)や形成外科による皮弁再建を行うことで感染のコントロールに努めています。

下部消化管外科

根治性と機能温存のバランス、あきらめない治療を!

大腸がんは、現在日本人が最も多く罹っているがんであり、女性では、最も多いがん死の原因となっています。
当科では大腸がん治療を中心に、小腸、大腸、肛門における良性、悪性疾患の外科的治療を積極的に行っています。
直腸・肛門疾患については根治性と機能温存のバランスに十分留意して治療を行っています。
当科の特徴は、進行した直腸がんでも集学的治療により出来るだけ肛門温存を図るようにしており、また再発した場合でも抗がん剤や放射線治療、そして手術療法を組み合わせることで「あきらめない」治療を実践しています。

池田 正孝(いけだ まさたか)診療部長

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