疾患概要
脳卒中とは、脳の血管がトラブルを起こす病気です。脳卒中は大きく脳出血・脳梗塞・くも膜下出血に分類されます。
脳梗塞は、脳血管が詰まってある領域に血液がいかなくなることで、その部分が死んでしまい障害が出ることをいいます。脳梗塞は血管の詰まり方によって太い血管の内側に血栓が生じるアテローム血栓性梗塞、細い血管が詰まるラクナ梗塞、そして心臓でできた血栓が血流に乗って脳の血管に詰まる心原性塞栓症と、さらに細かく分類できます。
脳出血は、脳の中にある小さな血管が切れる・破れるなど出血を起こすことで脳機能が傷害された状態です。脳出血では出血部位に応じて5つに分けられ、症状や治療方針がそれぞれ異なります。くも膜下出血は脳動脈瘤と呼ばれる血管の異常が破けて、脳の溝や表面に血液が溢れてしまった状態です。脳動脈瘤以外の病変が原因になることもあります。
原因・症状
片方の手足・顔半分のまひ・しびれが起こる、ろれつが回らなくなる、言葉が出なくなる、他人の言うことが理解できなくなる、力はあるのに立てなくなる、歩けなくなる、フラフラする、片方の目が見えなくなる、物が二つに見えるようになる、視野の半分が欠ける、経験したことのない激しい頭痛がする(くも膜下出血の場合)、など
検査
脳卒中に対する検査については主治医の先生が行いますが、脳卒中から起こっている障害についての検査はリハビリテーション科でも行います。例えば、嚥下に問題がある場合は、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を行います。
痙縮(けいしゅく)については、手技による主観的な評価が主であり、診察を行い、どの筋肉にどんな量のボツリヌス菌毒素製剤を使用するか検討します。また、検査とは異なりますが、リハビリテーション治療を行ううえで装具が必要かどうかの判定を医師・療法士・義肢装具士などで行います。
治療
脳卒中の発症後は手術や薬物による治療に加えて、できるだけ早くリハビリテーションという治療を開始します。急性期での治療が終了すると、必要な患者さんは回復期リハビリテーションというリハビリテーション専門の病院または病棟で引き続きリハビリテーションを受けることがあります。
当院では、脳卒中後にリハビリテーションを終了して自宅退院し、発症後に時間が経ってしまった患者さんでも、先端的リハビリテーションを実施しています。たとえば手の麻痺が残存している場合でも、CI療法という麻痺した手の集中訓練を行っています。また、脳卒中後に徐々に生じる痙縮(手足のつっぱり)に関しても、症状を軽減することのできるボツリヌス治療という専門治療を行っています。また最新治療としては、ロボットリハビリテーションや仮想現実(VR)を用いたリハビリテーションなども実施しています。
質の高いリハビリテーション医療の提供をめざして
急性期医療を中心に、さまざまな疾患よって生じる障害(機能障害、能力低下、社会的不利)に対する総合的なリハビリテーション医療をはじめ、リハビリテーション医療に関わる各種検査や相談、研究を行っています。さらに入院患者さんのスムーズな在宅復帰や回復期リハビリテーション病院等への転院を支援しています。また阪神南圏域地域リハビリテーション支援センターを併設し、地域のリハビリテーション医療に関する支援を行っています。
道免 和久(どうめん かずひさ)診療部長