疾患概要
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。
心不全とは、心臓がこのポンプの役割を十分に果たせなくなり、全身の臓器に十分な血液を行きわたらせることができなくなる状態です。日本人の死亡原因で、心疾患による死亡はがん(悪性新生物)の次に多く、その中でも心不全が最も多いのです。(厚生労働省「令和元年 人口動態統計月報年計(概数)の結果」より)
原因・症状
心不全になる原因にはさまざまありますが、弁膜症、心筋症、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、不整脈、高血圧などの疾患があります(表参照)。
急に発症した場合には突然の呼吸困難をきたしますが、だんだんと慢性的に起こってきた場合には、倦怠感や浮腫(ふしゅ)など、心臓とは結びつけにくい症状で出現します。進行すると動いた時の息切れがするようになり、運動能力が低下します。
心不全の原因となる代表的な疾患
弁膜症 | 心臓には血液が正しい方向に流れるよういくつかの弁構造がありますが、この弁構造に問題が生じる疾患 |
心筋症 | 心臓の筋肉が障害され、正常な動きができなくなる疾患 |
虚血性心疾患 | 心臓自身を栄養する冠動脈という血管が狭くなったり(狭心症)、つまってしまって(心筋梗塞)起こる疾患 |
不整脈 | 脈が異常に早くなったり遅くなったりする疾患 |
高血圧 | 血圧が上昇する疾患 |
心膜疾患 | 心臓を包んでいる膜に異常が生じて起こる疾患 |
検査
レントゲン、心電図、心臓超音波(心エコー)などを行います。
必要に応じて運動負荷検査、CT、MRI、核医学検査や入院して行うカテーテル検査などを行います。
治療
まず原因となる疾患に対する治療を行います。
重症弁膜症の場合には手術治療が必要になる場合もあります(カテーテル的弁留置術も行っています)。
虚血性心疾患の場合には、狭くなっている血管をカテーテルで広げる治療があります。
必要に応じて利尿薬(血液中の水分を尿として排出し、心臓の負担を少なくする)や心臓を保護するような薬を使用します。また、疾患によっては機械的なサポートを行う機器を用いることがあります。
その他
高血圧や糖尿病、高コレステロール血症などの治療は、将来の心不全を予防するうえでも大切です。
慢性心不全は徐々に進行する疾患ですので、こういった疾患をお持ちの方はしっかりと治療を続けてください。兵庫医科大学病院 循環器内科では、毎日心不全を担当する医師が外来を行っていますので、気になる方は主治医と相談のうえ受診ください。
経験豊富な専門医が、広範囲な心血管病の診療を行います
心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、下肢閉塞性動脈硬化症や深部静脈血栓症などの末梢動静脈疾患、心筋症や弁膜症などの心不全、心房細動や洞不全症候群などの不整脈をはじめ、広範囲な心血管病に対して各疾患領域に経験豊富な専門家が診療にあたっています。
阪神地区の中核機関として、地域の病院・医院等の先生方と密接な協力体制を構築していますので、かかりつけ医の先生よりご紹介いただければスムーズに受診いただけます。
石原 正治(いしはら まさはる)診療部長