兵庫医科大学病院
精神科神経科

うつ病

疾患概要

21世紀は不安・うつの時代と言われます。高齢化に伴う老後の不安や、若者に多い労働問題、格差社会の苦悩など、先行きが見えず不安定で落ち着かない状況が社会全体を覆っており、この時代に生きる人の多くが環境因子による心理的ストレスにさらされています。

このような状況の中で、うつ病の有病率は、1996年から2008年の期間に倍増しており、今や13人に1人(7%強)が一生の中でうつ病にかかるリスクを有しています(図1)。特に若い世代での疾病負担の中で、精神的問題の占める割合は大きく、これにより社会全体に大きな影響を及ぼしております(図2)。

また、精神科受診者の中で、およそ3人に1人がうつ病(躁うつ病を含む)と診断されており、(図3)、うつ病対策は社会的急務となっています。このようなうつ病を治療せずに放置しておくと、最悪の場合自殺に至ってしまうこともあり、うつ病・自殺によって、日本の国家予算の2.5%に相当する損失を生じてしまっているのが現状です(図4)。

原因・症状

人は心理的ストレスを受けても、すぐにうつ病になるわけではありません。けがをしても簡単な処置(洗浄や絆創膏など)で治ることがあるように、ある程度の心理的ストレスなら、日常生活の楽しみの中で解決していくことができます。しかし、大きなストレスや、小さなストレスの蓄積によって、自身の力では解決できなくなった(大怪我を負った)状態を抑うつ状態、症状がひどくなればうつ病となります(図5)。

うつ病では、抑うつ気分をほぼ毎日感じており、興味・関心・喜びが失われ、思考力・集中力が低下するために決断ができなくなります。また、落ち着きがなくなる焦燥感や、「役に立たず申し訳ない」などの無価値感・自責感が見られることも多くあります。これらの精神的な症状に加えて、身体的な症状が同時に現れるのが通常です(図6)。

検査

前項のように、うつ病では身体的な自覚症状が現れるため、うつ病の患者さんがまず内科を受診することの方が多くなります(図7)。しかし内科では、患者さんの身体症状の訴えに基づいて、身体疾患を探すための検査を実施するため、病名が確定できないことが多く、うつ病の診断に至らない可能性もあります。

これは、身体的症状は自覚しやすいのに対して、精神的症状は自覚しにくく、診察時に症状を話すことができないことが多いためであり、実際に、医師がうつ病を疑って質問しないとわからなかった症状の方が多くなります(図8)。残念ながら、うつ病を含む精神疾患では、血液検査や画像検査で疾患を見つけ出せるところまで医学が進歩していないのが現状であり、患者さんと医師との問診による診断に頼らざるを得ないのです。

(左図)うつ病患者の初診時の訪問科

治療

うつ病の治療において、最も必要不可欠なことは、十分な休養です。

内服治療や精神療法など多くのうつ病治療に関する情報があふれていますが、休養を十分に取れない状態で治療を行っても、事態は平行線か悪化することがほとんどです。従って、休養できる環境調整がうつ病治療の第一歩となります。うつ病の患者さんは、自分には価値がなく何もできないと感じているために、「やればできる」は、余計に無力感・無価値感を助長し、自殺に至ってしまうことがあります。

簡単にできる内容を具体的に示すこと、できなくても構わないこと、困ったら助けを求めることを繰り返し伝えていくことで、治療を継続していくことが重要です。患者さんの絶望感がひどく「治療しても良くなるはずがない」と思い込んでしまっている場合などは、通院治療を受けること自体を拒絶してしまうことがあります。このような治療困難な場合には、当院など病院での入院治療が推奨されますので、主治医にご相談下さい。

治療アルゴリズム

日本うつ病学会が推奨する治療アルゴリズムは以下の通りです。安全に完治するためには、3ヶ月の急性期治療、1年間の継続療法、3年間の維持療法が必要ですので、治ったと思っても治療を中断しないようにしてください。

(1)急性期治療 6〜12週間

SSRI/SNRIを十分量内服し2〜4週間で効果判定。効果不十分であれば変薬して継続。単剤で効果不十分であれば、抗精神病薬等の増強療法

(2)継続療法:

(1)にて寛解後4〜12ヶ月間
継続療法なしでは再発率50%、ありで15%

(3)維持療法

(2)で寛解維持後さらに3年程度
再発回数が多ければ再発率が上昇するため、アドヒアランスを維持し長期間薬物療法を継続することが望ましいとされている。

精神科神経科

ストレス過多の現代社会を生きるために

精神科神経科では、現代社会において誰もが罹患する危険性があるうつ病や不安症をはじめとして、統合失調症、躁うつ病、認知症関連疾患、摂食障害など精神疾患全般にわたり幅広い診療を行っています。また、これらの疾患に関する臨床研究や基礎研究を積極的に行い、最善の治療を提供できるよう研鑽を続けています。

松永 寿人(まつなが ひさと)診療部長

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