疾患概要
下肢閉塞性動脈硬化症は、足の血管の動脈硬化により血管が狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)する病気です。足への血流が悪くなることで、足に栄養や酸素を十分に送ることができなくなるため、さまざまな障害が現れます。
原因・症状
原因は下肢動脈の動脈硬化です。動脈硬化とは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や喫煙習慣によって引き起こされる血管の変性です。血管の内側の壁が傷ついて、そこにコレステロールなどが沈着することで、粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれるこぶができ、血管が狭くなります。その粥腫が破裂することで血栓ができ、急激な血流低下から血管の閉塞を生じることもあります。
このため、糖尿病・脂質異常症・高血圧症・喫煙・高尿酸血症・慢性腎臓病・肥満等の生活習慣病をお持ちの方ほど、起こりやすい病気と言えます。また、動脈硬化は全身同時に進行するため、狭心症や心筋梗塞・脳梗塞などと合併しやすい病気になります。
症状は段階によって大きく4つに分けることができます。
①冷感・しびれ感
指が青白くなることもあります。
②間欠性跛行(はこう)
一定距離を歩くと、主にふくらはぎなどが締め付けられるように痛くなり、休まないといけなくなります。歩ける距離が短いほど重症となります。
③安静時疼痛
じっとしていても足が痛み、夜も眠れなくなったりするなど、刺すような痛みが持続することもあります。
④潰瘍・壊死
治りにくい潰瘍ができたり、黒く壊死したりすることがあります。
検査
●ABI検査(上腕・足関節血圧比)
両腕と両足の血圧を同時に測り、比率を出します。通常は足の血圧の方が高いので1.0以上が正常値となりますが、足の血流に異常があると1.0未満となり、特に0.9未満となれば下肢閉塞性動脈硬化症の可能性が高くなります。
●下肢動脈エコー(超音波)検査
ゼリーを付けて体表面からプローブを当てて観察をします。特に太ももの付け根から下の血管は観察がしやすく、この検査に適しています。
●造影CT検査
点滴を確保した上で造影剤を注入し、下肢動脈が造影されたところで撮影を行います。大動脈からくるぶしの辺りまでの動脈が観察可能です。造影剤を使用しますので、腎臓の機能が悪く、まだ血液透析を施行されていない方には不向きです。
●下肢MRA検査
造影剤が使用できない患者さんに用いる検査です。造影CT検査と比較すると解像度は劣りますが、非造影で行うことができるのが利点です。
●カテーテル検査
足の付け根や腕などの太い動脈からカテーテル(医療用の細い管)を挿入して、カテーテルから血管を描出しやすくする造影剤を流し込むことで、「下肢動脈の状態を詳しく調べる」検査です。カテーテル検査は閉塞が生じている部位や程度などが分かることが多く、治療方針を決める上でも役立ちます。
治療
●運動療法
とにかく歩くことです。特に間欠性跛行(かんけつせいはこう:歩行時にふくらはぎなどの筋肉が痛み、歩き続けることができない状態)の患者さんに有効です。運動療法には大きく「病院で行う監視下運動療法」と「自宅で行う在宅運動療法」といったように2種類あります。1回30分程度、できれば1日2回を目標に、最低でも週に3回程度は運動療法を行うことが好ましいです。
●薬物療法
「抗血小板剤」(血液をサラサラにする薬)や「末梢血管拡張薬」などを服用することで症状の改善を期待できる場合があります。
●カテーテル治療
下肢動脈内まで到達させたカテーテルを用いて、閉塞している部位を「バルーン(風船)」で膨らませて拡張していく治療や、血管の広がりを維持する効果のある「ステント(網目状の筒)を挿入する」といった治療を行います。
●バイパス手術
血管が狭くなっているところや詰まっているところの先に、自分の血管(足の静脈)や人工血管をつなぎ合わせる手術です。

経験豊富な専門医が、広範囲な心血管病の診療を行います
心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、下肢閉塞性動脈硬化症や深部静脈血栓症などの末梢動静脈疾患、心筋症や弁膜症などの心不全、心房細動や洞不全症候群などの不整脈をはじめ、広範囲な心血管病に対して各疾患領域に経験豊富な専門家が診療にあたっています。
阪神地区の中核機関として、地域の病院・医院等の先生方と密接な協力体制を構築していますので、かかりつけ医の先生よりご紹介いただければスムーズに受診いただけます。
石原 正治(いしはら まさはる)診療部長