疾患概要
摂食障害は、「体重や体型へのこだわり」や「体重や体型へのこだわりに関係した行動の異常」が見られる病気です。主に拒食症(神経性やせ症)、過食症(神経性過食症)、過食性障害に分けられます。
拒食症
「痩せたい」「太るのが怖い」という気持ちから極端に食事を制限したり、自己誘発性嘔吐や不適切な下剤の使用など、体重を減らすための行動を取ったりすることが特徴的です。それにより、激しい痩せと身体的な問題が出現します。
過食症
短期間に大量の食べ物を摂り、その後、自己誘発性嘔吐や不適切な下剤の使用などにより体重増加を防ごうとすることが特徴的です。拒食症ほどの痩せはなく、体重は正常範囲で変動します。
過食性障害
過食を繰り返しますが過食症のような代償行動はなく、肥満に結びつきます。自分でコントロールできないむちゃ食いへの衝動が特徴的です。
原因・症状
摂食障害の発症には、文化・社会的要因や心理的要因などが複雑に絡み合い、関係していると言われています。
文化・社会的要因としては、痩せていることを社会的成功や美しさの象徴と捉え、賛美する社会的背景があげられます。
一方、心理的な要因としては、生きていく上での心の痛みがあります。患者さんの多くは、孤独や疎外感、自信のなさ、周囲の期待に応えられない罪悪感などで一杯になっていて、何らかの方法でそれを解消しようとやみくもに行動してしまう傾向があります。その一つが、痩せという理想の自己の追求です。つまり、痩せることによって耐えがたい心の痛みを何とかしようとする行動の結果が、病に結びついてしまうのです。
検査
摂食障害の診断と治療を行うためには、上記のような行動の異常や体重の変化だけではなく、その背景にある心の痛みを少しでも知るために、生まれてからこれまでのことを詳しくお話しいただくことも重要です。また、摂食障害は極度の低体重や自己嘔吐、不適切な下剤乱用など様々な身体的なリスクも生じるため、血液検査や心電図検査などの身体面での検査も行います。
治療
①自分自身の身体と心の状態を把握する
検査を行い、身体と心の状態を評価します。それによって治療の方針が決まります。
②身体の状態を改善する
拒食症の人は身体が回復するのに十分な栄養の摂取が、過食症の人は過食を起こさないための食生活が必要です。診察で具体的に相談するとともに、必要な方は定期的に栄養士のカウンセリングも受けていただきます。
③こころの状態を改善する
病気にしがみついてしまう心の問題について診察で話し合います。「どういうことがしんどいか」「どうすれば楽になるのか」を一緒に考え、見つけた課題を克服できるように取り組んでいきます。
④入院について
命に関わるような低体重や身体の異常がある場合は、入院を考える必要があります。しかし、入院だけでは摂食障害は改善されません。命の危機を回避することが、身体の状態を少しでも良くするための方法です。
ストレス過多の現代社会を生きるために
精神科神経科では、現代社会において誰もが罹患する危険性があるうつ病や不安症をはじめとして、統合失調症、躁うつ病、認知症関連疾患、摂食障害など精神疾患全般にわたり幅広い診療を行っています。また、これらの疾患に関する臨床研究や基礎研究を積極的に行い、最善の治療を提供できるよう研鑽を続けています。
松永 寿人(まつなが ひさと)診療部長