疾患概要
社交不安症とは、人に見られている場面で何かをすることを過剰に恐れる病気です。人前で喋ったり、字を書いたり、食事をしたりする場面で、「恥をかくなど自分が恥ずかしい思いをするのではないか」と非常に心配してしまい、その結果、顔がひきつったり、赤くなったり、ドキドキしたり、汗をかいたり、手が震えたりします。小学生高学年や中学生の頃から上記のような症状が気になり始めることが多いです。また、上記のような症状が理由で人前に出るのが怖くなり、学校や職場に行けなくなり、不登校や引きこもりなどの原因になることもあります。
原因・症状
社交不安症の原因はまだ十分に解明されていませんが、脳内の不安の回路が過剰に反応するため、症状がでてくると考えられています。かつては「対人恐怖症」という性格の問題として扱われていましたが、現在は不安の病気であり、治療で改善できることがわかっています。
社交不安症が続くと人と関わる場面を避けるようになるため、引きこもって生活がうまくいかなくなることが多く、また、自分に対しても自信が持てなくなり、気持ちがどんどん落ち込んでうつになる人も多くいます。
検査
社交不安症を診断するためには、「これまでの生活での人と関わる場面での不安がどうだったのか」について詳しくお話しいただくことが重要です。不安が高くなりやすい原因として身体の病気が隠れていることがありますので、それらを見逃さないために血液検査や画像検査(頭部CT)、脳波検査などを行います。また、性格傾向や苦手なことを明らかにするために心理テストも行います。
治療
社交不安症に効果がある治療には2種類あります。
一つは薬を飲むことです。「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」「選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」と呼ばれる薬のいくつかに効果があることが判明しています。
もう一つは認知行動療法と呼ばれる治療法で、薬を使わず、考え方と行動を変えて症状を減らしていく方法です。
また、上記2種類の治療法を併用して行うこともあります。
ストレス過多の現代社会を生きるために
精神科神経科では、現代社会において誰もが罹患する危険性があるうつ病や不安症をはじめとして、統合失調症、躁うつ病、認知症関連疾患、摂食障害など精神疾患全般にわたり幅広い診療を行っています。また、これらの疾患に関する臨床研究や基礎研究を積極的に行い、最善の治療を提供できるよう研鑽を続けています。
松永 寿人(まつなが ひさと)診療部長