がん医療の取り組み

がん医療の取り組み

がん医療の取り組み

兵庫県・阪神間を支える
地域がん診療連携拠点病院として
高度医療と安心を提供しています。

木島 貴志 がんセンター長 / 呼吸器内科 主任教授(診療部長)

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専任スタッフが患者さんをきめ細かにサポート

 兵庫医科大学病院は2007年にがんセンターを設立し、翌2008年には高いレベルの医療が求められる「地域がん診療連携拠点病院」として厚生労働省の指定を受けました。治療と支援の両輪でがん患者さんをトータルにケア・サポートできる「がんの専門病院」として兵庫県・阪神間エリアを支えています。外来化学療法では各診療科と連携して安全な化学療法(抗がん剤治療)を行い、緩和ケアや、がん診療支援では患者さんの生活支援に取り組んでいます。

 センター所属の専任スタッフを配置して患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)に配慮したケア・サポートを行っているのが特長です。現在、医師を5名、がん看護・がん化学療法を専門とする認定看護師や、がん認定相談専門員を2名配置しています。がん化学療法や緩和ケアを専門とする薬剤師も所属しており、院内調剤で投与可能な体制が整っています。がんを中心としていますが関節リウマチや炎症性腸疾患といった生物学的製剤を投与する症例も扱っています。

大学病院の特性を活かした集学的・包括的な診療

 当院が特に力を入れているのが、内科系・外科系の診療科をはじめ、放射線科・産科婦人科・精神科神経科や病院病理部など複数の診療科に所属する医師や、看護師・薬剤師・放射線技師・ソーシャルワーカーが集まって治療方針を決定するキャンサーボード(がん専門のカンファレンス)です。この取り組み自体はセンター設立時からありましたが、当時はがんを直接的に扱う診療科だけが関わっていました。キャンサーボードが真価を発揮してきたのはこの数年、体内の特定の分子に働く「分子標的治療薬」が開発され、副作用も含めた全身管理が必要になってからです。

 京都大学の本庶佑教授がノーベル医学・生理学賞を受賞して話題になった「免疫チェックポイント阻害薬」もそのひとつで、画期的な治療薬として注目を集めていますが、副作用に関しては未知数な部分があるため、投与にあたっては万一に備えて緊急対応体制を整えておく必要があります。当院のキャンサーボードには全診療科の医師が集まっているので、たとえば胃に異常が起きた場合は消化管内科、甲状腺に異常が起きた場合は糖尿病・内分泌・代謝内科、肺炎なら呼吸器内科、急に血圧が高くなったら循環器内科、皮膚疾患なら皮膚科というように、該当する診療科の専門医が迅速に対応できる仕組みができあがっています。また「原発不明がん」についても、キャンサーボードで検証して病院全体で治療方針を定めています。つまり、キャンサーボードは単に症例を話し合う場ではなくて、全診療科が協力する体制そのものとして機能しており、この協力・連携体制の徹底こそが当院の強みです。

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がん遺伝子パネル検査の本格化に向けて

 がんゲノム医療とは、がんの組織を用いた「がん遺伝子パネル検査」で遺伝子変異が見つかった患者さんに対して、がんの原因となる異常遺伝子由来の分子に最も効果が期待できそうな薬物を選択して個別化治療を行うことです。2018年4月に全国に11箇所の「がんゲノム医療中核拠点」が指定され、2019年9月に当院は、大阪大学医学部附属病院と連携してがんゲノム医療を推し進める「がんゲノム医療拠点病院」に指定されています。

 これまで先進医療として行われてきた「がん遺伝子パネル検査」のいくつかが、2019年度前半には保険適用となる予定です。それに伴い複数の企業のパネルを使用できるようになり、治療の門戸が広がります。現実的には、検査を希望される患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)や全身状態などのあらゆる条件を主治医が鑑みて、パネル検査を実施する必要性と合理性が認められた場合に、がんセンター・遺伝子医療部を通じて検査を進めることになります。従って、がん遺伝子パネル検査はすべての患者さんに行うべき検査ではないのですが、保険適応となることでますます本格化することは間違いありません。患者さんやご家族からのご相談や質問も増えると思いますので、相談室でのカウンセリングやメンタルサポートも強化していきます。

診療科の壁を越えた連携体制を強化

 がんゲノム医療では、薬物療法の専門家、遺伝医療の専門家やカウンセラー、各診療科の医師など、さまざまな専門家の連携がますます重要になってきます。私の専門である肺がん治療でも2018年末から初回治療として化学療法と免疫療法の併用療法が保険適用になりました。免疫療法では、内分泌や神経系の免疫疾患の副作用が出ることもあります。そのため臓器横断的な連携診療体制、あるいは直接的にはがんを扱わない診療科の協力が必須になってきています。また、例えば遺伝子パネル検査を行った肺がん患者さんに乳がんの特異的な遺伝子変異が見つかることもあります。このような流れの中で、がんセンターやキャンサーボードが担う働きはますます重要になってくると思います。

 また、遺伝性がんの予防にも連携ネットワークは不可欠です。たとえば遺伝性乳がんの場合、欧米ではがんが発症する前に乳房や卵巣・卵管を切除する予防医療が行われています。遺伝子に関する診断は遺伝子医療部という専門部署が行い、乳房は乳腺・内分泌外科、卵巣・卵管は産科婦人科が診療します。さらには、将来妊娠を希望される乳がん患者さんに対し、卵子や受精卵などを凍結保存する生殖医療も実践されています。先日当院でも、抗がん剤治療を経た患者さんが無事に妊娠・出産されました。こうした生殖医療は強く求められていますが、どこでもできることではありません。当院を中心に形成する「兵庫県がん・生殖医療ネットワーク」では、生殖医療を望むがん患者さんを積極的に受け入れています。

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がんプロフェッショナル育成という使命

 がんゲノム医療の本格化に向けた整備においては、他大学や他施設との連携も重要です。兵庫医科大学病院は、近畿圏の国公私立7大学9学部が連携して個別化医療を実践できるがん専門医療人の養成を推進する、文部科学省採択の「7大学連携個別化がん医療実践者養成プラン」に参加しています。他大学と連携して、ゲノム医療や希少がん・小児がん、思春期から高齢者まで異なるライフステージのがん患者に対応できる、がん専門医療人材の養成にも積極的に取り組んでいます。

「治療のために諦める」をなくしたい

 高度医療の提供とともに、がん患者さんの相談支援も大切な取り組みです。がんセンターの支援部門では、専門の相談員が窓口となって医師や看護師と連携しながら総合的に問題を解決するお手伝いをしています。特に就労支援に力を入れており、具体的にはハローワークの方や社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に直接相談できる場を院内に設けています。相談窓口は地域にも開かれており、年間相談件数約1800件のうち外部からの相談が約1割を占めています。

 また、患者さん同士で支え合う「ピア・サポート」にも力を入れています。実際に体験した患者さんから直接アドバイスや体験談を聞いたり、患者さん同士が集まって相談したりすることで、心が軽くなるケースはとても多いです。抗がん剤治療、入院生活、就労、乳房再建など、リアルな声に触れられる機会を提供しています。

 兵庫医科大学病院のがんセンターは地域のがん医療を支える大学病院として、「予防」「治療・研究」「相談支援」、そのすべてに積極的に取り組んでまいります。

 

 ※最新更新日 2019年9月11日

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きじま たかし 木島 貴志がんセンター長 / 呼吸器内科 主任教授
(診療部長)

専門分野
  • 呼吸器内科
  • 肺癌・中皮腫
  • 癌免疫療法
  • COPD
  • 気管支喘息
  • 間質性肺炎
資格等
  • 日本内科学会 認定医・総合内科専門医・指導医
  • 日本呼吸器学会 専門医・指導医・代議員
  • 日本がん治療認定医機構 認定医
  • 日本医師会 認定産業医
  • 日本肺癌学会 評議員

交通アクセス

最寄り駅
阪神電鉄「武庫川駅」西出口より徒歩5分
住  所
〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1-1

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月~金曜、土曜(第3) 8:30から16:45

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