潜在的な患者が多いと考えられるシェーグレン症候群
シェーグレン症候群は、教科書では関節リウマチや全身性エリテマトーデスよりも後ろ、膠原病の中で5~6番目に紹介されることが多いですが、実際は関節リウマチに次いで2番目に患者数が多い膠原病です。国内の患者数は約6.8万人で、17対1の割合で女性が多く、特に40~60代での発症が多く見られます。
シェーグレン症候群の典型症状は、眼・口腔の乾燥です。しかし、これらの症状は非特異的であり、眼が乾くのは「ドライアイ」、口の乾きは「加齢のせいではないか」などと言われて終わってしまうケースが多く、シェーグレン症候群と診断されていない潜在的な患者は相当数いると考えられます。欧米の有病率を当てはめると、国内に10万人から25万人はいると考えられています。
症状は多岐にわたり、どの診療科も患者にとって入口になり得る
シェーグレン症候群は、外分泌腺のほかに関節・皮膚・肺・腎臓・神経・血液・消化器などにも影響を及ぼし、臓器病変を呈する場合があります。人によって病状は全く異なるため、どの診療科も患者にとって入口になり得るのです。だからこそ、適切な診断・治療につなげるためには、地域のさまざまな診療科の先生方にシェーグレン症候群をよく知っていただくことが重要です。
当科に来院されるケースとして、内科からの紹介に加え、地域の眼科や歯科、耳鼻咽喉科の先生からのご紹介が多いです。症状が眼または口腔の乾燥のどちらかだけであれば、長時間のパソコン業務によるドライアイや、加齢、薬剤、糖尿病などによるドライマウスということも多いですが、眼・口腔の両方に乾燥所見が見られる場合はシェーグレン症候群である可能性は高まります。眼科、歯科、耳鼻咽喉科の先生方には、ご自身の診療領域の乾燥症状に加え、異なる領域の乾燥症状や臓器病変がある、あるいはご自身の診療領域にしてはかなり程度が強い乾燥症状が出ていると感じられたときは、「もしかしたら」と疑いを持っていただければと思います。
適切な診断のもと、地域の先生方と有機的な診療を
シェーグレン症候群の適切な診断を行うためには、専門的な医療機関で検査することをお勧めいたします。当科では、血液検査や唾液分泌量測定、眼科検査で診断が付かない場合には、唾液腺シンチグラフィー検査や口唇小唾液腺生検を積極的に行い、より正確な診断を行っています。
治療に関しては、残念ながら今のところシェーグレン症候群の根本的な治療法はないため、乾燥症状に対する対症療法が中心となります。当科にご紹介いただいた場合、当科で診断して治療方針を定め、地域の先生方のもとで治療を継続していただく場合もあります。ただし、そのような場合でも、臓器病変が起こっていないか、健常人や他の膠原病に比べ発生率の高い悪性リンパ腫のリスク因子はないかなどの確認のために、当科にも定期的に受診させていただきたく思います。専門医療機関としての大学病院と、地域の先生方が協力し合い、両輪をなして有機的な診療を展開していくことが重要です。
疑わしい症状があれば、膠原病専門の診療科へ
20年ほど前までは、膠原病専門の診療科は全国的まだまだ少なく、地域の先生方でも、50代以上の方であれば、学生時代には母校に膠原病内科がなかったという方も多いのではないでしょうか。兵庫医大は、2002年に単独の講座としては西日本で2番目のリウマチ・膠原病科を設置し、以降20年以上にわたって診療実績を積み重ねてきました。
膠原病は症状がさまざまな臓器にまたがるため診療が難しいと思われがちな領域の一つではありますが、どう対処すべきかわからず診療が停滞してしまうのは患者にとって最も良くない状況です。これはシェーグレン症候群に限らず、すべての膠原病において言えることです。地域の先生方におかれましては「もしかしたら」と疑うようなケースがあれば、ぜひ一度院科にご相談ください。
Doctor's Profile
あずま なおと
東 直人
アレルギー・リウマチ内科
診療部長
- 専門分野
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- リウマチ・膠原病
- アレルギー
- 資格
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- 日本内科学会 総合内科専門医・認定医・指導医
- 日本リウマチ学会 専門医・指導医
- 日本アレルギー学会 専門医・指導医
- 日本臨床免疫学会 免疫療法認定医
過去に開催された「兵医サタデーモーニングセミナー」のアーカイブ動画は、兵庫医科大学病院の登録医制度「武庫川クラブ」にご登録済みの先生方、 および一部の関連医療機関の先生方のみ視聴可能なコンテンツです。上記のインタビュー記事を読んで「アーカイブ動画を視聴したい」と思った方は、武庫川クラブへのご登録をお願いします。
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